過去を遡る事は簡単だけど。甘美な思い出だけでいいのに、またあれか。
◆過去を遡る事は簡単だな。記憶さえあれば、記憶さえ消えなければ。
でも記憶を、よみがえる記憶を人はコントロールできないものなのか。
甘美な思い出にだけ浸ることはなかなかできない。
直ぐに、記憶がつながって、辛い事、醜い事、後悔することがいつも出てくる。
◆高校生の時の恋人にしたかった、或いは一時的に恋人だった二人の女の子のことはよく思い出す。
一人は、中学生2年の時に好きになった郷里の子で、高校1年頃までは、好きだった。初恋。でも手を握ったことくらいしかなかった。
私は高校生まで、かなり草食系であった。女性の方から積極的になってくるのを待つタイプだった。そのこともそれで何となく終わってしまった。
もう一人は、高校2年生の時に好きになったクラスメイトであった。全くそれまで好きになった子と違うタイプであった。進学校だったので、頭はまあまあよかった。でもその時に私は進路などでかなり悩んでいる頃であった。のめり込むことはなかった。下宿先の近所の小学校の裏庭でのキスがマックスであった。
◆この二人の写真や手紙などは妻と知り合った時にほとんど処分した。敢えて記憶から消そうとしたのか。結婚時のケジメみたいなものであった。ところが、同窓会をしたときにいずれとも再会した。そしたら、一人は手紙をくれて、一人はさばさばと失敗した結婚の話をしてくれた。女は強い。私は、拙い感情丸出しの返信の手紙を一人にして、もう一人はドキドキして何も話せなかったが。
◆もうこれらは「青春の思い出」に過ぎないであろう。私は、結局バレーボールの夢、大学受験と司法試験受験の挫折から抜け出せないままで青春を過ごし、何もドラマのようなことがないままに、人生が終わろうとしている。唯一の救いは今の妻とその間にできた2人の子供である。奇跡だ。家族を抱きしめたい愛情がいずれにも強く湧き上がる。
◆どうして、初恋や青春の恋は成就しないのであろうか。そこに、永遠の秘密があり、そこから「物語」が始まり、その終わりもなく、繰り返し語られていくのであろうか。アダムとイブなどの神話やホモサピエンスはじまりの神話などが生まれるのであろう。私も、もう少し経済的な余裕があれば、わが青春のエピソードなどを踏まえた小説を書くことがきっとあるであろう。