我妻民法について
我妻民法について
◆我妻民法の特色
我妻民法は、長く学会の通説の解説書として君臨してきました。その「民法講義」は、圧倒的なボリュームで全巻通読は非常に困難でした。
私は「民法総則」と「債権総論」はよく参照しました。
いまの学生は、もう知らないのでないでしょうか。本屋さんでも見かけなくなりましたね。
◆「民法案内」等の著作物
「民法案内」は、愛弟子の川井健教授等によって補てい版が出ています。前にメールマガジンで星野先生の民法学習方法を申し上げましたが、こちらの方はまずしっかりとした概説書を読むように薦めています。
「民法案内」は民法の解釈センスを磨くには最高の本との評価を与えていいでしょう。私も、20代のころ、布団の中で毎晩1章(1節)を読むのを習慣にしていることがありました。
◆「物権法」は改訂版を出す前に我妻先生がお亡くなりになりましたので、古いもののみが古本屋さんで高値で売れていました。わたしも、何とか苦労して難波の古本屋でやっと手に入れました。薄いのですが、非常に切れのいい文章でした。入手してとても嬉しかった事を覚えています。
◆憲法についてもたびたび言及されていました。こちらの造詣も深かったようです。
◆ダットサン民法の愛称で親しまれた「民法1・2・3」も愛読しました。通説を簡潔に記述した最高の本でした。今でも好きです。やはり、お弟子さんたちにより改訂版が出ています。
◆民法講義のシリーズの中で、やはり「民法総則」は民法の学習をするのであれば一度読んでおくべき本と思います。中でも、法律行為論や時効論は優れています。
◆民法講義シリーズでは、民法総則の次に「債権総論」が人気がありました。信義則を基本にすえた見事な利益衡量論はまさにお手本の法解釈でした。実務界にも十分に精通しての公平な法解釈には説得力がありました。
◆我妻民法を「基本書にできる人・できない人」の分かれ目
我妻民法はいわゆる「全部書かれている本」です。基本書とするには分厚すぎて敬遠する人が多い本でした。しかし、これを基本書にしていた人もいました。
その境目は何でしょうか。
それは、法解釈学で言うと、自己の体系を作っていける人です。学習の主体性がハッキリしている人です。そういう人はこのような分厚い本でも構わないのです。
それとやはりある程度の学習が進んだ人でないと読みこなせないでしょう。必要なところとそうでないところが読んでいて分からないと困りますから。
わたしも、我妻民法のオモシロさが分かったのは、有斐閣双書などのレベルの学習がほぼ終了して、四宮総則などを熟読するようになった頃でした。
◆我妻民法、最初の一冊にオススメはこれです。
民法 (単行本) 我妻 栄 (著), 遠藤 浩 (著), 良永 和隆 (著)
単行本: 265ページ 出版社: 勁草書房; 第七版 (2004/07)
…民法の入門書(一冊完結)として定評のあった書籍の補訂版です。遠藤先生
などのお弟子さんが新法などを織り込んでいます。
◆我妻先生の出生地である山形県米沢市に「我妻栄記念館」があります。生家を補修したもののようです。まだ、行ったことがありませんが是非行ってみたいです。
ホームページはここです。http://www9.ocn.ne.jp/~wsakae/index.html
◆『近代法における債権の優越的地位』 我妻 栄著 (1953年刊)
この論文は、我妻民法学の基礎理論に当たります。資本主義経済の発展に伴い,債権が契約と結びついて支配的作用を営むようになると、 物権の代表である所有権は旧来の重要性を失い、 代わって債権が財産化し、そのための担保制度が発達していくことをドイツの社会を参考に述べたものです。
◆我妻先生のものは、とても著作の生命が長く、いまだに復刻版や補訂版などが出ています。やはり、民法論理のすばらしさがその最大の理由でしょう。読者の皆さんにまさに通説中の通説である「民法総則」だけは是非読まれるようにオススメします。
◆ダットサン民法は最新の改訂版が出ていて、資格試験などの勉強会で使われています。
民法(1)第2版 http://item.rakuten.co.jp/book/1786665/
◆ダットサン民法全3冊の構成です。
ア.民法 1 第3版 (1) 我妻 榮 (著), 有泉 亨 (著), 川井 健 (著) 単行本: 595ページ 出版社: 勁草書房
イ.民法〈2〉債権法 我妻 栄 (著), 川井 健 (著), 有泉 亨 (著) 単行本: 519ページ 出版社: 勁草書房
ウ.民法〈3〉親族法・相続法 我妻 榮 (著), 有泉 亨 (著), 遠藤 浩 (著), 川井 健 (著) 単行本: 443ページ 出版社: 勁草書房;
⇒この本は、最初に読むのでなく、百選を使った判例学習や論点学習、択一問題演習などをして、一通りの勉強が終わってから読む本です。
法の体系と通説判例の流れがよく分かります。絶品です。私も、集中的に読むと大きな感銘を受けました。
民法が分かるために是非とも必要です。